レット症候群とは?
レット症候群(Rett症候群)は、主に女児に発症する神経発達障害で、遺伝子変異が原因となっています。この疾患は、一度習得した発語や運動機能が退行していくのが特徴です。
主な特徴と症状
1. 発達の退行
- 生後6ヶ月から1歳半までの間に、発達が一旦正常に進んだ後、言葉を話す能力や運動機能が低下します。
- 特に手の動きが失われ、目的のある動作ができなくなります。
2. 特徴的な手の動き
- 常同行動として、手を揉む、口に持っていく、胸を叩くなどの動きが見られます。
- 自閉症の症状に似た繰り返しの動作が特徴です。
3. 歩行の障害
- 症状が軽い場合は歩行可能ですが、重度になると歩行困難になり、車いすが必要になることもあります。
- 筋緊張の低下により、座位を保つのが難しくなる場合があります。
4. 発語の消失
- 喃語や意味のある言葉を話していた場合でも、言語機能が徐々に失われます。
- 結果として、コミュニケーションが困難になります。
5. その他の症状
- 呼吸障害、歯ぎしり、睡眠障害、成長障害(身長・体重の伸びが悪い)、痛覚の鈍化などが見られることがあります。
経過と進行
レット症候群は、以下の4つのステージに分けられます。
第1期:発達の停滞(生後6ヶ月~1歳6ヶ月)
- 運動・言語の発達が遅れる、または進行が止まります。
- 自閉的な行動(視線が合わない、おもちゃに興味がない)が見られることがあります。
第2期:急激な退行(1歳~4歳)
- 運動機能と言語の退行が急速に進行します。
- 常同行動(手を揉む、口に持っていく)が現れ、歩行が不安定になることがあります。
第3期:安定期
- 精神面での症状(イライラ、かんしゃく)が落ち着く一方で、てんかんや側弯症などの身体的な問題が進行します。
第4期:運動機能の低下(発症から10年以上)
- 筋肉の異常(ジストニア運動)や脊柱側弯が進行します。
- 歩行が困難になり、車いすが必要となる場合が多いです。
原因
- X染色体にあるMECP2遺伝子の変異が主な原因です。
- 他に、CDKL5 や FOXG1 の変異が関与する場合もあります。
- 突然変異で起こることが多く、親からの遺伝はほとんどありません。
合併症
- てんかん:70~80%の患者に発生。難治性の場合も多いです。
- 感染症、誤嚥性肺炎、骨折などの身体的合併症が見られます。
治療・予後
- 現在のところ、根本的な治療法は見つかっていません。
- 対症療法(リハビリ、薬物治療)により症状の緩和を目指します。
- 遺伝子治療や細胞治療の研究が進められていますが、実用化はまだ先です。
診断基準
ICD-10
- WHOの国際疾患分類に基づいて診断されます。
- DSM-5 では除外されており、精神障害とは区別されています。
支援と理解
- 言葉や動きでの意思疎通が困難なため、周囲の理解とサポートが不可欠です。
- 専門機関や支援団体との連携が推奨されます。
参考リンク
レット症候群は、症状が進行する疾患ですが、早期診断と適切なサポートにより、**生活の質(QOL)**を向上させることができます。家族や支援者の理解が重要です。