ダウン症(ダウン症候群)とは【専門家解説】

ダウン症(ダウン症候群)とは
ダウン症(正式名称:ダウン症候群)は、染色体の突然変異によって生じる先天性の状態です。主に21番目の染色体が3本になる「21トリソミー」が原因で発生し、他にもモザイク型や転座型といったタイプがあります。発生頻度は600~800分の1とされています。
ダウン症の特徴
発達の遅れ:言葉や運動の発達がゆっくりです。
筋緊張の低下:筋肉の緊張が弱く、運動能力に影響を与えることがあります。
視覚的な認知処理が得意:聴覚よりも視覚を使った学習が得意な場合が多いです。
顔の特徴:小さな顔、吊り上がった目、小さい鼻、口が開いていることが多いなどの特徴が見られます。ただし、個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。
性格の傾向:人懐っこく陽気な性格が多い一方、こだわりが強い場合もありますが、性格は個人差があります。
合併症
ダウン症の人には、以下のような合併症が見られることがあります。
先天性心疾患(心内膜床欠損症、心室中隔欠損症など)
消化器疾患(十二指腸閉鎖、鎖肛など)
白血病、けいれん、白内障、斜視、中耳炎、難聴
閉塞性無呼吸、排尿機能のトラブル、甲状腺機能異常、性腺機能の不調
どの合併症が現れるかは個人差があるため、診断後はエコー検査や血液検査などを行い、必要に応じて治療を行います。
診断方法
妊娠中の検査
- スクリーニング検査:胎児にダウン症の可能性があるかを確認します。
- 確定診断:スクリーニング検査で可能性が認められた場合、羊水検査や絨毛検査などで確定診断を行います。
出生後の検査
- 血液検査を通じて染色体の異常を確認します。
- 合併症の有無を確認するために、X線検査やエコー検査も行います。
寿命と医療支援
以前は「寿命が短い」とされていましたが、医療の進歩により、現在では平均寿命が60歳前後にまで延びています。寿命の延長に伴い、高齢期のケアや認知症の早期発症への対応が求められており、医療・福祉の分野で継続的な支援体制が進められています。
ダウン症の子どもへの接し方
- ゆっくり、はっきりと話す
- 具体的かつシンプルに伝える
- 繰り返し伝える
- 一度に一つの内容に集中する
- ジェスチャーやイラストなど視覚的な工夫を活用する
- 返事を急かさず、忍耐強く待つ
視覚的な認知が得意な場合が多いため、言葉以外の方法を活用することで理解を助けることができます。子どもによって得意・不得意が異なるため、さまざまな方法を試しながら、その子に合った接し方を見つけることが大切です。
社会生活と支援
医療や支援体制の充実により、ダウン症のある人たちの多くが福祉就労や一般就労を通じて社会で活躍しています。教育面でも、特別支援教育だけでなく、インクルーシブ教育の推進が進んでいます。
まとめ
ダウン症は染色体の突然変異により生じる状態ですが、適切な医療や教育のサポートを受けることで、充実した生活を送ることが可能です。理解を深め、温かく見守ることが、社会全体の共生を進める一歩となります。